【TRANSIT×酒噺】 旅の“宝噺”<ネパール編>
2019,3,29 更新
トラベルカルチャー雑誌「TRANSIT(トランジット)」では、毎号特集した国や地域の旅の思い出を編集部と制作に携わった取材クルーが語りあう「旅の宝話」という企画を連載しています。「酒噺」では、「TRANSIT」とのコラボ企画として不定期に、その内容を「旅の“宝噺”」としてご紹介します。今回はTRANSIT43号で掲載されたネパール編。ヒマラヤのロングトレイル「GHT」(グレートヒマラヤトレイル)を踏破しようとしている写真家・飯坂 大さんにとって、ネパールは初めてのバックパッカー旅行のスタート地点だったほどに縁が深い場所。ここ5年は毎年通っているというネパールの魅力についてお訊きしました。
取材クループロフィール
東京生まれ、埼玉育ち。広告や雑誌などで活躍中。世界20カ国を旅している。2014年に「GHT project」を仲間2名と立ち上げ、アッパールートの踏破に向け活動中。
ネパールの旅の“宝噺”
飯坂(以下I):2004年、大学最後の試験を受けたあとですね。インドやラオスなど10カ国を8カ月かけてバックパッカー旅行しましたが、そのうち2カ月はネパールにいたんです。
T:ネパールのどこに惹かれたんでしょう?
I:アンナプルナへ行ったとき、短期間の予定だったのに、ブヨに刺されてロッジに滞在しなければならなくなってしまって。そこで近所の子どもと遊んだり、毎日アンナプルナを眺めたりするうちに、山の人びとや暮らしをいいなあと思うようになりました。そして、自分が旅で得たものを発信するようになりたいと思って、旅しながら、またその土地で働いたりしながら撮影するようになったんです。
T:アウトドアメーカーや、写真スタジオに勤務されたりもしていたんですよね。
I:はい。2012年に独立したとき、またネパールに向かいました。エベレスト街道や、アンナプルナ・サーキットを一人で歩き、山にも登って撮影しました。自分がどこまで成長したのか確かめたかったんです。
T:ヒマラヤのロングトレイルである「GHT」を踏査する「GHT project」を始めたのはいつから?
I:2014年春に山岳ガイドの根本さんと出会ったのがきっかけですね。彼にGHTの話を聞いて、自分なら写真家として行けるとプレゼンしました。そしてライターの根津さんとともに、2014年から毎年、30日くらいずつ歩いています。
I:はい。2018年は1年目のつづきを歩く旅でした。すでに知っている場所から歩き始めたので、また違った楽しさがありましたね。
I:これまでで一番厳しい旅でした。毎年、11月前後に行くんですが、それは乾季で雨や雪が比較的降らないからなんです。ですが2018年は異常気象で悪天候がつづいて、6000mの峠を越えられなかった。初めて、行きたい場所に辿り着けなかったんです。長く歩いているとこんなこともあるなあと思いました。それでも充実した旅でしたが。
T:食事はどうされているんですか?
I:民家などでダルバート(ネパールの定食を指し、野菜中心のヘルシーな料理)をいただいていますね。お腹が空いていると蒸しただけのジャガイモもおいしいですし。今回行ったマカルーでは、トゥンバという粟を発酵させたお酒を飲ませてもらいました。ネパール人が自分たちが飲む用に作っているもので、夜のお楽しみでした。野菜や豆などを和えたサデコという料理にインスタントラーメンを混ぜてくれたり、ヤク(チベットに生息する牛の仲間)の乾燥肉なんかがおつまみで出てくると最高です。
I:この「GHT project」では毎回ネパールのライ族がスタッフとして一緒に歩いてくれて、彼らに「おかえり」と言われると、ただいまって思いますね。
T:次は2020年の春に行く予定だそうですね。またご報告、お待ちしています!
TRANSITとは?
URL:http://www.transit.ne.jp/
クレジット
(雑誌に掲載されている文章と一部異なる部分があります。)