【TRANSIT×酒噺】 旅の“宝噺”<ベトナム編>
2019,2,15 更新
トラベルカルチャー雑誌「TRANSIT(トランジット)」では、毎号特集した国や地域の旅の思い出を編集部と制作に携わった取材クルーが語りあう「旅の宝話」という企画を連載しています。「酒噺」では、「TRANSIT」とのコラボ企画として不定期に、その内容を「旅の“宝噺”」としてご紹介します。今回はTRANSIT38号で掲載されたベトナム編。ベトナムの長期取材を敢行した写真家をゲストに迎え、現地の味を思い出しながら、ベトナム料理で乾杯! とっておきの旅の裏話で、今日もお酒がすすみます。
■取材クルー プロフィール
1993年、KEIOGATA 氏のアシスタントとなる。94 年からニューヨークへ渡り、99年に帰国。ポートレートを中心に、雑誌や広告で活躍。「TRANSIT」では「水と人間の営み」をテーマに、ベトナムの全土を縦断した。
ベトナムの旅の“宝噺”
谷口 (以下T): 自然体の人が多い国だな、という感じ。北から南まで広範囲を回ったんですけど、その印象はどこへ行っても変わらなかったですね。
H:確かにそうですね。編集部もみんなでハノイに行ってきたのですが、飾り気がなくて親しみ易い人柄の人が多かったです。
T:そうそう。なぜか真っ昼間から、バイクの上で器用に寝てる人がいたりね(笑)。生き方が自然体。外国人への接し方もそうで、色んな人が道案内してくれたり、船の手配や地元の人しか知らない情報をまとめてくれたりしたんだけど、親切にしてあげてるっていう感じをまったくうけなかった。
T: 逆! すごい親切。親切なんだけど、してあげてるとか、助けてあげてるとかっていうのを感じさせない自然体の空気感というか。流れに身を任せていたらさまざまなことがうまく回って、結果的にこっちの視点からすると助かったなということが多かった。自分のためにしてくれてるんだっていう感じが伝わってくると、それに派生して、ありがとうっていう感謝の気持ちが生まれるんだろうけど、それも生まれなかったんだよね。親切や人助けを、普通のこととして当たり前にやってくれてるから、受け手側もそれが当たり前のことに感じられて。
【豊富に採れる海産物が所狭しと並ぶ】
T:うん。そのおかげで気楽で、気疲れもなかった。本当に不思議な感覚だったな。あれが究極のおもてなしかもしれない。
H:旅をしていてストレスのない国?
T:そうかな。旅のはじめにバベ湖から帰ってくるとき、崖崩れで2 時間くらい立ち往生した時間があって。でも、そのときに誰もイライラしてないんだよね。雨期には崖崩れくらい起きるだろ、というように、その状況を受け入れている。そういう場面に置かれると自分がやりたいことの予定が狂ってしまうわけだから「なんだよこれ」とか「なんでなんだよ」とかっていう感情が生まれがちじゃない。でも、そういうのがなかった。乗客は2 0 人くらいいたんだけど、淡々としていて誰も動じてない。静かに待ってるだけ。まだその頃はベトナムの感覚とか物事の進み方を理解できてなかったから、俺は先の予定を気にしてやきもきしちゃってたけど。
【崖崩れで立ち往生。こんな状態でも平然とバイクで通っていく】
H:自然体で、当たり前の事を当たり前にする人たち……もしかしたらベトナムの宝は人かもしれませんね。
T:ははは。人が宝か。でも、確かにそうかもしれないな。シャイで物静かで、だけどやるべきことはきっちりやってくれる。こんな素晴らしい人たちのいる国ってなかなかないもの。
【フォーはどこで食べても抜群においしかった】
【パクチー等をはさんだベトナム風サンドウィッチ「バインミー」とともに一杯】
TRANSITとは?
URL:http://www.transit.ne.jp/
■クレジット
(雑誌に掲載されている文章と一部異なる部分があります。)