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柚子栽培発祥の地・京都水尾で「冬至」と「柚子」の歴史に触れる噺

柚子栽培発祥の地・京都水尾で「冬至」と「柚子」の歴史に触れる噺

2023,12,15 更新

冬も深まるこの時期、庭先の木の枝に一際目を引く黄金色の柚子が見られるようになりました。この季節の風物詩といえば冬至の柚子湯を思い浮かべるように、この時期は柚子の収穫が最盛期を迎えます。柚子は、古くから大切な食物として、また香りの良い果実として珍重されてきました。今回はそんな柚子を生み出す、京都北部にある「水尾」の生産者さんのもとを訪れました。

そもそも冬至と柚子の関係って?

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冬至といえば、ご家庭はもちろん銭湯などでもサービスとして行われる柚子湯ですが、なぜ柚子湯に入浴する習慣ができたのでしょうか。
その始まりは江戸時代と言われており、江戸歳時記に「銭湯で柚子湯を焚く」という記述が見られます。
由来は「柚子=融通&冬至=湯治」で「湯治で融通よく過ごす」という、験を担いだ語呂合わせなどから始まったという説や、本来禊(みそぎ)の意味を持っていた入浴に、邪気や厄を避ける効果のある香りの高いものを合わせた説など諸説あるようです。

始まりはどうであれ、柚子は良い香りで心をリラックスさせてくれます。柚子湯は、ビタミンCなどを豊富に含む果皮などを湯に入れるので、当時の健康的な入浴として理にかなったものだったのでしょう。
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柚子はもともと日本原産の果物ではなく、奈良時代に中国からもたらされたものと言われています。日本で最も古い産地と言われている場所の一つが、今回訪れた京都市右京区の水尾地区です。鎌倉時代に花園天皇(1297年〜1348年)がこの地に柚子を植樹したのが栽培の起源とされており、現在は収穫量こそ多くないものの、日本を代表する柚子の産地となっています。

柚子の里・水尾で活躍する村上さん

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水尾地区は愛宕山のふもとにあり、山々に囲まれた山里です。
今回お話を伺ったのは柚子の生産者である村上和彦さん。
宝酒造のクラフトチューハイ「寶CRAFT<京都ゆず>」で使用されている柚子を栽培されているほか、京都の新しい名産を生み出す「京檸檬プロジェクト」​に参加されており、「寶CRAFT<京檸檬>」の開発にも助力されている、柑橘栽培のスペシャリストです。
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「私はもともと柚子農家の生まれで、若い頃は就職した企業で仕事をする傍ら、実家を手伝っていました。この仕事に本腰を入れたのは定年退職後なんです。今は息子が跡を継いでくれていますが、他の水尾の農家では高齢化や後継者不足が続いていて、徐々に収穫量も減っています」と村上さん。
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「柚子の木には、長靴をも貫通する鋭いトゲがあり、さらに柚子の皮は傷に弱いので、収穫時には細心の注意が必要です。京都盆地の山間にある水尾は雪が降り始めるのも早く、この雪が当たると柚子の身が傷んでしまうんです。高い脚立に足をかけ、分厚い革手袋をし、完熟まで時を待ちつつ雪が降り出す前のわずかなタイミングを見計らって収穫作業を行うことは、高齢者にとって簡単なことではありません」。
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村上さんは、ご自身の畑の柚子だけでなく、販路を持たなかったり、高齢化して果実の運搬が難しい水尾地区の農家さんからも柚子を買い取って卸すだけでなく、ご自身が経営する飲食店「直八(なおはち)」で料理や柚子湯として提供するほか、柚子味噌や柚子胡椒として柚子を加工・販売されています。こうした村上さんの尽力もあって、かつては貴重品で京料理の素材として珍重されていながらも、販路に乗せられず大量に放棄されていた水尾の柚子は、今は収穫量の約99%が利用されるようになっているのだとか。
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「宝酒造さんが、随分前から水尾の柚子に興味を持ってくださっていたのと、果実の加工業者である日本果汁さんと知り合ったことでお酒づくりに利用できたのは、水尾の柚子を多くの方に知っていただく良い機会になりました」と村上さん。

水尾産にしかない柚子の風味とは!?

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京都の企業として、地元の素材を活かしたいと常々考えていた宝酒造。それが実現したきっかけは、村上さんと日本果汁との出会いでした。時間をかけて育て、手作業で収穫した風味の良い村上さんの柚子を、果汁だけでなく、果皮も種子も丸ごと使った素材へと加工。さらに、その柚子の風味を最大限に活かすために、京都・伏見の水と約2万樽・85種類の中から厳選した樽貯蔵熟成焼酎で合わせて丁寧に仕込んだのが「寶CRAFT<京都ゆず>」だったのです。

京都の企業が力を合わせてチューハイを開発する中で、宝酒造の技術者はあることに気づきました。
宝酒造では、水尾の柚子以外にも日本各地の柚子を使ったお酒を送り出していますが、水尾の柚子は、酸味の中にもまろやかな甘味があって、奥ゆかしい上品さを持っているのです。
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水尾の柚子ならではの風味は、どうやって生まれるのか―その疑問に、村上さんが一つの答えを出してくれました。
「水尾の柚子だけの味わいがあるのだとしたら、それは水尾の気候のせいでしょうね。柚子は、秋から冬へ移り変わり気温がグッと下がると黄色く色づきます。しかも、寒暖差が激しいほどこの傾向が見られます。そうして樹上で完熟した柚子は、香り豊かで甘味のあるものになるんです。水尾の地は、陽の当たる斜面と、冷え込む盆地特有の気温が柚子の栽培に適しているのでしょう。一方で、他の地域では寒暖差がゆるやかで、完熟する前に収穫してしまうことが多いのが、味の違いに影響しているのではないでしょうか。もちろん、完熟前の柚子も美味しいです。フレッシュで爽快感があって、酸味がありますよ」。
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「でも、多くの方は、産地などをあまり意識されませんし、一般的に販売されている柚子に産地が書いてあることも少ないですからね。日本果汁さんや宝酒造さんが、果汁だけでなく柚子を丸ごとつかって、水尾の柚子だけの個性がわかるようにお酒にしてくれたのは、良かったと思います」。

今年の冬至は柚子尽くしを楽しんでみませんか?

こうして京都の人々が力を合わせて誕生した「寶CRAFT<京都ゆず>」は、京都市内の飲食店などで飲むことができるほか、もちろん水尾の「直八」でも、取り扱っています。
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しかも、「直八」では、地元の農家さんが手塩にかけて育てた「水尾の柚子」をふんだんに使った地鶏の鍋や柚餅子(ゆべし)、柚子味噌、柚子皮の甘露煮など、京都の冬らしい、品があって爽やかな風味絶佳の味覚を心ゆくまで楽しむことができるほか、柚子湯で山里散策の疲れまで癒すことができます。みなさんもぜひ、この冬は京都・柚子の里「水尾」を訪れてみてはいかがでしょうか。

<取材協力>

▽記事で紹介したお酒はこちら
・寶CRAFT(タカラ クラフトチューハイ)
   

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