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【兵庫・達人と巡る角打ち】神戸御影・美よ志の噺

【兵庫・達人と巡る角打ち】神戸御影・美よ志の噺

2022,9,2 更新

酒販店の片隅でさっとお酒をいただく「角打ち」。地元の人が愛する、地域の角打ち店の魅力を達人・芝田真督(しばた・まこと)さんと探索していくシリーズです。

酒蔵が立ち並ぶ神戸市東灘区。
良い酒所には、良い酒販店と良い酒場が揃うもの。
第6回の舞台となるのは、阪神御影駅の目の前にある「美よ志(みよし)」。
1度は閉店の危機にあったものの、常連のラブコールにより再開したという、長い歴史を持つお店です。

芝田真督さん

日本ペンクラブ会員。神戸の下町に古くからある大衆酒場や大衆食堂、純喫茶などの魅力を伝える文筆家。
著書『神戸ぶらり下町グルメ」『神戸立ち呑み八十八カ所巡礼」『神戸懐かしの純喫茶』(以上神戸新聞総合出版センター)のほか、『兵庫下町まちあるき(兵庫図書館)」『純喫茶で学ぶ食のルポルタージュ( KAVC )」『下町グルメのススメ(下町芸術大学)』などの案内役など精力的に活動する。
現在、サンテレビWebサイトにてコラム「神戸角打ち巡礼(https://sun-tv.co.jp/column/kakuuchi)」 を連載中。

【書籍】「神戸角打ち巡礼」(https://sun-tv.co.jp/column/kakuuchi
【Webサイト】 http://msibata.org/
【神戸立ち呑み巡礼】 http://msibata.org/tachinomi/
【ブログ】 https://ameblo.jp/msibata/

常連とワイワイ、友人とのんびり、どちらがお好み?

「美よ志」は阪神御影駅から徒歩30秒という最高の立地にあります。
駅側にあるガラス戸を開いて入ると冷蔵庫の並ぶ酒販店の一角を利用した、カジュアルな角打ちの風景が広がります。
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酒販店の名残がある立ち飲みスペース
その時、「お待ちしていました、今日はどちらで飲まれますか?」と声をかけてくださったのが社長の三好成和さん。「店の奥に、とっておきの場所があるんですよ」と語る芝田さんの後について、店の奥へ。冷蔵ケースの間の小さな通路を通った先には、ツヤツヤと輝くカウンターがあり、なんとも渋い立ち飲みスペースが広がっていました。
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カウンターがある立ち飲みスペース
「店の奥にあるこちらのスペースが、本来の『美よ志』です。最初に入ってこられた酒販店の名残がある本棚が並んでいた場所では、5年ほど前まで酒の販売をしていました。当初はこのカウンタースペースのみで立ち飲みの営業をしていましたが、こちら8人も並べばいっぱいになってしまうのと、喫煙をされる方とされない方で場所を分けたいと思い、酒販店のスペースでも立ち飲みを始めました。そして今のように、2か所で立ち飲みが楽しめる形にしたんです。」と三好さん。

「美よ志」によく通っているという芝田さんのお気に入りは奥のカウンタースペースなのだそう。
「スペースによって、結構お客さんの層も違うんです。酒販店の方はカジュアルに自分のペースで飲みたい方や、複数人で来店される方が多いですね。カウンターがある、奥の立ち飲みスペースは、常連さんが和気あいあいと語らっていることが多いですね。常連さんは一人でいらっしゃることが多いですし、ここで顔馴染みを見つけて話すという感じです。こうしたお酒の飲み方による棲み分けができているのも素敵ですね」。

観光客も灘の蔵人も密かに通う店

「『美よ志』は、酒屋としては今年で100年という老舗なんですよ」と芝田さん。確かに、酒販店のスペースには、歴史を感じさせる酒蔵の看板や美人画のポスターが数多く掲げられています。
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「この店で角打ちを始めたのは1963(昭和38)年ごろだったと思います。その頃は、乾き物やソーセージなど簡単なおつまみを提供していましたが、そのうち母が料理を作って提供するようになったんです。ただ、しばらく前に私の母が怪我をしまして、それを機に一度は、店を閉めようと思ったのですが、常連のお客さんが“続けてくれ”と言ってくださいました。その言葉が精神的な支えとなり、おかげで今も、こうして店を続けられています」と三好さん。
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常連のお客さんには、地域のご年配の方が多いということだが、その中には灘五郷の蔵元の方も少なくないのだとか。「自前のお酒はもちろん、他の蔵のお酒を試飲しにいらっしゃることも多いですよ。みなさん研究熱心です」と三好さんは笑って話します。

「美よ志」は、灘の酒を数多く、しかもリーズナブルに揃えているのも特徴のひとつ。それを目当てに酒蔵巡りの観光客がツアーの締めに、コップを傾けていくこともあるのだとか。

こだわり満載の料理メニュー

店主のお母さんの怪我をきっかけに、現在の「美よ志」では、威勢がよくチャーミングなパートの方々が料理を担当しています。その中から三好さん、芝田さんのおすすめのお料理を注文しました。
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手始めは「揚げ玉豆腐」。冷や奴にたっぷりの揚げ玉をかけ、出汁の効いたタレを回し、ミョウガを散らしたもの。シンプルながら、なかなか居酒屋ではみられないメニュー。ザクザクと揚げ玉をかき混ぜていただくと、豆腐のなめらかな口当たりの中に、タレの染みた揚げ玉の歯応えが加わって実に食べ応えのある食感になります。合わせるのはタカラ「焼酎ハイボールのシークヮーサー。さっぱりとした酸味と、冷奴という夏向きの取り合わせが絶品。

ちなみに「美よ志」ではシークヮーサーの焼酎ハイボールが大人気とのことで、一人で何本も楽しまれる常連さんもいるのだそう。

丁寧な仕事に感激する「小肌昆布〆」

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続いては三好さんのおすすめである「小肌昆布〆」。夏を迎えたこの時期ならではの小肌の柔らかさ、ほんのりとした甘さがたまりません。骨の多い小肌を丁寧に処理し、昆布締めにしてくれるお母さん方に感謝したくなる味わいです。お酢の香りの効いた小肌にはタカラ「焼酎ハイボール」のドライを。小肌の身の旨みと酢の酸味を上手に引き立ててくれる名脇役です。

名物メニューは最高の酒のアテ「鯖のいしる焼き」

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「私はこれが大好きで」と芝田さんが選ばれたのは、「鯖のいしる焼き」。北陸名産の魚醤のひとつ、“いしる”を効かせた脂がたっぷりと乗った鯖は、旨味がぎゅっと詰まった名品。お酒はもちろんご飯もほしくなってしまう美味しさです。タカラ「焼酎ハイボール」のレモンと合わせると、ちょっとレモンを絞ったような爽快さが加わります。レモンの酸味が、鯖の脂をサラリと流してくれるため、しつこさを感じることなく、旨味と甘味を堪能できます。

夏の風物詩が手軽に食べられる幸せ「はもとじ」

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最後は、神戸で夏らしいものを、というリクエストを三好さんにお願いしてこの日の日替わりメニューである「はもとじ」をオーダーしました。しっかりと骨切りをされたハモ。ここでもお母さん方の手間に感激です。ほろほろと柔らかく淡白なはもの身をたっぷり出汁が含んだ卵でとじた一皿は上品な旨味が楽しめます。はもとじの相棒は、タカラcanチューハイのレモン。クセのない焼酎の甘みと、ほのかなレモンのアクセントが加わることで、はもとじが一層豊かな味わいに変わります。

気さくな常連さんが集うのが「美よ志」の魅力

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気づけば2時間余り。お店の立ち飲みスペースには常連さんの姿が増えてきました。芝田さんも常連さんと和やかに会話しています。常連さんが多い酒場というのは、人によっては敷居が高く感じてしまうこともあるかもしれませんがご安心を。
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三好さんはこう話してくださいました「構える必要なんてないんです。大声を出したり、しつこく絡んだりしなければ、どんな方でも大歓迎です。お酒の種類がわからなかったらどんどん聞いてください。それに、うちの常連さんはみんな、初めてのお客さんにやさしいですから。初めての方と見るや話しかけておすすめのお酒を教えてくれる常連さんもいるんですよ」。地域のラブコールで、閉店の危機を脱したという「美よ志」。
そのエピソード通り、ここではいつも、気持ちのいい常連さんの酒噺に花が咲いているのでしょう。
【取材協力】
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美よ志
住所:兵庫県神戸市東灘区御影本町2丁目15−18
営業時間:15:00-20:30 日曜祝日休
(取材日:2022年6月29日)


▽記事で紹介したお酒はこちら
タカラ「焼酎ハイボール」
タカラcanチューハイ


▽達人・芝田さんと巡る兵庫の角打ち
<第1回> 垂水・フジワラ酒店
<第2回> 神戸西元町・須方酒店
<第3回> 苅藻・飯田酒店
<第4回> 神戸東川崎・石井商店
<第5回> 神戸魚崎・濱田屋
   

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