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京花街の一角で、静かに楽しむ“おばんざい”の噺

京花街の一角で、静かに楽しむ“おばんざい”の噺

お酒に合う料理というと、どうしても味の濃いものや油を多く使ったものを想像しがち。しかし、時には素材の魅力をしっかりと感じられる、薄味の料理をゆっくりと楽しみながらグラスや盃を傾けたいものです。 素材の持ち味を生かす料理といえば、伝統的な和食。 そして、伝統的な和食を味わえる場所といえば、そう、京都。 折しも季節は春。 冬を越え、野に山に萌え出で、海川に溢れる季節の旬の食材を存分に使った“おばんざい”を求めて、京都・祇園で33年続く「花の(はなの)」を訪れました。

飾らない暖かさが魅力、姉妹が経営するおばんざい屋さん


京都市東山区祇園町。
数々の飲食店や趣ある京町家が軒を重ねる花見小路から、ほんの数十メートル。
ともすれば見落としてしまいがちな、細い小路の先に「花の」はあります。

店名が染め抜かれた暖簾をあげて中に入ると、出迎えてくれるのはふたりの女性。
この店を経営する溝口敬子(みぞぐち・けいこ)さんと登志子(としこ)さんが、33年前に姉妹でこの店を開きました。

姉の溝口敬子さん

「妹(登志子さん)が料理好きで、ずっとふたりで飲食店をしようと思っていたんです。この店で私たちが作っているのは、普段私たちが食べているおばんざい。シンプルでありふれたお料理ですが、ふたりで京都のいろいろなお店を回って旬の食材を仕入れて、季節感のあるもの、なにより食べ飽きない美味しさを感じられるものをお届けしようと思っています」(敬子さん)。

妹の溝口登志子さん

「お料理もそうですが、来てくださるお客様にとって居心地よく、落ち着ける店であるよう気を配っています。姉(敬子さん)は、パワフルでお客様の機微を見るのが本当に上手くて、ちょっと落ち込んでいるように見えた常連さんが、姉と話しているうちに“元気になったわ”とすっかり笑顔になることも多いんです。毎日変わるお品書きも、全て姉の手書き。その日の美味しいものをご紹介するような気持ちで、時間をかけて書き上げています」(登志子さん)。

お酒のための「濃い味」は考えない


「花の」のカウンターには、その日のおばんざいが盛られた鉢が15種類ほど並びます。私たちが訪れたのは3月の初め。
こんもりとしたおばんざいの山には、きゃらぶきにスナップエンドウ、わらびに菜の花やしじみ、いかなごのくぎ煮など。春を感じる食材がいくつも。
色鮮やかな野菜に、つやつやと輝く煮物など、お酒と一緒に味わいたくなるものばかりです。

しかし、お酒に合わせるために味を濃くするといったことは全く考えていない、と話す敬子さん。

「確かに、お店にいらっしゃるお客さんはお酒と一緒に料理を楽しまれることがほとんどです。でも、お酒に合わせて味を濃くしてしまったら、どんな料理も一緒になってしまいます」


「お客様それぞれにお顔があって性格があるように、食べ方や飲み方もお一人ずつ違います。だから私たちは、濃く味付けするのではなく、しっかりと引いたお出汁やお酒、みりんなどを使って、素材の味を楽しみながら、お代わりしても食べられるような優しい味つけにしているんです」と敬子さん。

カウンターの奥には、こだわって買っているという季節の食材が所せましと並びます

お料理好きという登志子さんが、敬子さんの言葉に続きます。

「お客様のご要望に合わせて食べ方を変えることもありますね。たとえば菜の花。これはさっと湯がいていますが味はついていません。お出しする直前に出汁と合わせた加減醤油で味を合わせますが、お客様のご要望があれば、辛子和えや三杯酢など味付けを変えてお渡しします。濃い味ではなく、お客様一人ひとりが楽しめるよう、おもてなしするのも私たちの役割なんです」(登志子さん)。

五感を試されるような、淡く新鮮な“おばんざい”


敬子さん、登志子さんとお話している目と鼻の先で、美味しい香りを放っているおばんざいの数々。
早速、オススメのものを紹介していただきました。


まずいただいたのはこの店の定番、敬子さんが「ぜひ食べてほしい」と胸を張る、自慢のポテトサラダ。

マヨネーズの量をできる限り少なくし、その分ハムの程よい塩気と、九条ネギで爽やかな香りを加えたもの。
ジャガイモのほくほくした食感とねっとりとした舌触りのバランスが心地よく、その中から現れるハムとネギの香りのアクセントも抜群です。
材料は非常にシンプルなのに、複雑で奥の深い味わい。私たちの普段食べているポテトサラダとは一線を画する驚きある一皿です。

合わせるのは「タカラcanチューハイ」のプレーン。
チューハイの爽やかな飲み口が、素直なポテトサラダの味を邪魔することなく、炭酸の刺激が合わさってもう一つの食感をもたらしてくれます。


続いては、季節のものを。
菜の花のおひたしにスナップエンドウとタラの芽の炊き合わせ、山椒を効かせた、きゃらぶき。

「春の皿には苦味を盛れ」という言葉通り、ほろ苦く旨味ある菜の花。
口の中でぷちんと弾けると、出汁とともに甘みが広がるスナップエンドウはタラノメの鼻に抜ける野趣あふれる香りと好対照です。
特に驚かされたのはきゃらぶき。
山椒の爽やかな香気は豊かに感じられるのに、あっさりとして、きゃらぶきの香りと甘みを十分に堪能でき、まさに塩梅の妙です。

味、香り、噛みごたえ、舌触り、噛むことで耳に響く音まで五感を刺激する春の幸は、冬の寒さですっかり縮こまってしまった体を目覚めさせてくれるような美味しさです。
そんな春の味には包容力のある日本酒がぴったり。松竹梅「豪快」生酒のフレッシュな香りが、旬菜のほのかな苦みや甘さを、口だけでなく鼻や喉へと優しく広げてくれます。

33年の歴史の中で、常に人気を博し続ける定番のおばんざい

糸こんザーサイは、ピリッとしたザーサイの塩気と糸こんにゃくの喉越しが楽しい、素朴で飾らない味わい。
凍み(しみ)こんにゃくは、一度凍らせて、食感をやや硬く、味を染みやすくしたもので、年末にたまたまこんにゃくを冷凍させてしまったことでできたメニューなのだとか。
れんこんのカレー酢は「普通の酢れんこんでは面白くない」と、カレー粉を合わせた人気メニュー。
ほんのり甘く酸っぱいれんこんに、香辛料が不思議とマッチして、お酒のすすむ佳肴(かこう)です。

滋味とともに、食感や香りで驚きを与えてくれる定番のおばんざいに合わせるのは、飲み口のすっきりとした全量芋焼酎「一刻者」(いっこもん)のロック。
一品ずつ、ゆっくりと味わう素材の魅力に、芋の香りがしっかりと寄り添ってくれます。


小鉢のおばんざいが続くと、ちょっとボリュームのあるものをいただきたくなります。お願いしたのは、鰆(さわら)の西京焼き。

春を告げる鰆のしまった身の繊維一本一本まで染み込んだ、西京焼きの甘く香ばしい味覚。
味噌漬けなのにしつこさは皆無、火を通すことで魚の脂と一体になった味噌が、お酒をすすめてくれます。
春とはいえ、花冷えのする食事の終盤。
ここは松竹梅「豪快」を熱燗でいただきます。
酒の香りが味噌と鰆の香りを抱き込んで、口の中で揮発する瞬間。日本人に生まれた幸せを感じます。

移ろう季節と変わらないおもてなし


「創業当時から、今でもずっと顔を見せてくれる大切な常連さんもいらっしゃいますし、創業当時、アルバイトで働いてもらった学生さんはもう50歳になるのに、年に一度この店に集まって周年をお祝いしてくれるんです」と敬子さん。

「みなさん、店に来るたびに“ここだけは変わらへん”って言ってくださるんですよ。その言葉が聞こえると嬉しくて、いつまでも変わらずお美味しい料理と、綺麗なお店で迎えようと思います」と登志子さん。

周年を祝う歴代アルバイトの皆さんの寄せ書き

季節によって「花の」のおばんざいに使われる食材は多彩に変わります。
しかし、このお店で守られている、優しく食べ飽きない味、そしてお客様を心からくつろがせてくれる京都らしいおもてなしの心は、これまでも、そしてこれからも決して変わることはないのでしょう。

京都祇園の小さな路地。
みなさんも、ちょっと味の濃い酒肴に飽きたら、この暖簾をくぐってみては?
季節の食材の良さを素直に引き出したおばんざいと、溝口さん姉妹の和やかな笑顔に口もとは自然と笑みをつくる、豊かな時間を過ごせるはずですよ。

<取材協力>
花の
住所:京都市東山区祇園町北側347-51 雅会館 1F
営業時間:17:30~22:30
定休日:日曜・月曜・祝日
※お店は予約制。訪問前にはお電話にてご予約をお願いします。



■料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
・タカラcanチューハイ(プレーン)
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/regular/lineup/index.htm

・松竹梅「豪快」(飲食店限定商品)
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/gokair/

・全量芋焼酎「一刻者」
https://www.ikkomon.jp/

■そのほか京都のこだわりの料理とお酒をいただく噺はこちら
出汁を楽しむ“京おでんと出汁割り”の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/hCmi8

京都の街中にある港の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/eRiKI