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「お酒とは、人と人とをつなぐもの」…京都の住宅街にあるお寿司が美味しい居酒屋店主の噺

「お酒とは、人と人とをつなぐもの」…京都の住宅街にあるお寿司が美味しい居酒屋店主の噺

酒にまつわる店主の思いを聞くシリーズ。「僕にとってお酒は、人と人をつなぐものです」と語る、京都にある居酒屋の店主は九州男児。その言葉に込められた思いを探っていきます。

寡黙な九州男児。その魅力をお酒が引き出す

京都の繁華街から少し外れた住宅街・釜座二条。交差点の西北角で、一際明るく照らされている看板を見つけました。今回お邪魔した居酒屋「釜座二条 丸福」です。この店の3代目店長である宮田光(みやた・ひかる)さんに、お話をお聞きしました。

宮田さんは九州・宮崎出身。ともすると寡黙で不器用に映ってしまう九州男児です。京都に来たばかりの頃は、関西のノリに馴染むのがなかなか難しかったそう。仲間を見つけ、いい人とのつながりの中で、この仕事ができるようになったのは、「お酒の力」が大きかったと振り返ります。
「僕にとってお酒は、人と人をつないでくれるものです」。

当初、宮田さんは、飲み仲間として丸福のオーナーと知り合いました。お客としても大好きだったこの店に通っていくうちに、オーナーに誘われて就職することを決めました。「オーナーにとって、関西のノリにハマりきれない僕がおもしろかったのかもしれません」と、真面目に分析する様子が印象的です。

笑顔で話すことも苦手で、伝えたいことも隠してしまう。そんな性格の宮田さんですが、お酒はそこをうまく引き出してくれます。お酒を飲むことで、宮田さんも共に飲む相手も盛り上がり、大笑いしながら他愛のない話になることも。そのうちに、仕事への哲学が見えてきて、相手の本当の考えが浮かび上がってくる。宮田さんはこんな風に「話が弾む、楽しいお酒」が大好きなのだそうです。さまざまな経験を通して、一緒に働く仲間たちと、かけがえのない人間関係を築いてきました。

量もきちんと確認しながら丁寧に注ぐ。当たり前を大切にする

酒好きの宮田さんが店長を務める丸福のこだわりは、なんと言っても日本酒。今では多くの店が半合売りをしていますが、他店が始める前から、丸福は日本酒を楽しんでもらう工夫として、半合売りを提供していたのだとか。色々な種類の日本酒を楽しめると好評で、半合で注文するお客さんも多いそうです。

「どのお酒においても、量にはこだわっています。例えば、焼酎の水割り。きちんと規定の分だけ入っているか確認して、丁寧に注ぎます。ハイボールや酎ハイは、氷に炭酸が当たるとガスが抜けやすいので、グラスに添わせるようにやさしく注ぐ。当たり前のことかもしれませんが、当たり前をきちんとすることを大切にしています」。

それでは、規定の量を守って丁寧に注がれた本格焼酎「よかいち」<芋>の水割りと、「うなきゅう巻き」をいただきましょう。
なるほど。焼酎の水割りは、グラスに対して多すぎず少なすぎず、運ばれてきたときに嬉しくなるようなちょうど良い量です。グラスを手に取ると、氷がカラリと音を鳴らし、芋のゆたかな香りが鼻を抜けていきます。芋焼酎のコク深くキレのある後味が、甘いタレをまとった「うなきゅう巻き」によく合います。

また、店内にもお酒を楽しむ工夫があふれています。
例えばBGMは、会話が途切れた時にはすっと耳に入ってきて、気を取られすぎずにまた会話が盛り上がるような選曲をあえてチョイス。少し懐かしいヒットソング、あるいは人気のJポップを選んでいるそうです。
一人飲みの人も楽しめるように、1階ではテレビがいつもついています。快適なBGM、小さなテレビの音、それらをほどよく搔き消すお客さんの会話。活気ある居酒屋さんの居心地の良さには、たくさんの配慮が積み重ねられているのです。

そして、お酒を最も楽しませてくれるのが料理です。
大衆寿司酒場とうたう丸福の看板料理は、もちろんお寿司。鮮度の良い旬の魚を美味しく握ってくれ、しかもリーズナブル。寿司以外にも、「焼き枝豆」や「うずらの卵の薫製」など、よくある居酒屋メニューに一手間かけた「ワンランク上の献立」が揃っています。これも工夫に余念のない丸福らしさを演出していて、常連からも大人気です。

「いい意味での“ゆるさ”が居酒屋の魅力だと思うんです」。
宮田さん曰く、丸福はあくまで居酒屋。本格的な握り寿司はあるが、唐揚げもフライドポテトも、一工夫ほどこしたおつまみも並ぶ。そんななんでもある「ゆるさ」が丸福の魅力なのだと話します。

お酒の魔法を借りて、成長するスタッフ

美味しいお酒に、美味しい料理。でも、それだけでは人は集まってきません。住宅街で常連さんが集う店が生まれるのには、理由があります。
「お客さんに、その店と自分がつながっていると感じてもらえるか、それが大切」と、宮田さんは言います。
主にキッチンで料理を担当する宮田さんは、ホールになかなか出られません。丸福にとって、お客さんと直接つながるのはやはりホール。この店で働くメンバーの仕事ぶりに、宮田さんは一番気を遣っています。

1日7、8人が入る丸福のスタッフは総勢30人以上。「みんなには『将来飲食の仕事について欲しい』なんて思っていません。でも、人とのつながりは単に愛想がいいだけでは生まれないこと、ホールの仕事は決して作業ではないことを感じて欲しいと思っています」。まるで担任の先生のように宮田さんは語ります。

「自分も酒の場で育ててもらったので、若い子からの誘いは断りません。僕らの『アフターファイブ』は、閉店後24時を過ぎてからです。朝まででも付き合いますよ」。好きなお酒は芋焼酎。なんとも魅力的な店長さんです。
スタッフとの飲み会はかつての未熟だった自分と重なる大切なもの。スタッフたちがお酒の魔法も借りながら、自分の殻を破って成長していくことがとても嬉しいそうです。そして、その成長は絶対に居酒屋以外の仕事でも役に立つと宮田さんは確信しています。最初はお客さんに声を掛けられても固まってうまく対応できなかったスタッフが、経験を積んで、だんだんお客さんに気に入られたり、つながったりしていく。そんな彼らの様子がたまらなく好きなのだそうです。

今回、コロナ禍で店をしばらく休み、再開したことで、宮田さんは大きな手応えを感じました。それはスタッフの教育も含め、育んできたお店の空気に「間違いがなかった」と思えたからだそうです。
腰を据えてしっかり飲んでくれる常連さんをスタッフが心からの笑顔で接客している姿。コロナ前は当たり前だったそんな景色が、店の再開とともにどんどん戻ってきました。店の活気を感じながら、「居酒屋の本質はコロナ後も変わらない」と心底思えたと宮田さんは言います。

すなわち、居酒屋の本質は「人と人をつなぐ場である」ということ。
宮田さんは「忙しくなってきた今だからこそ、サボらず丁寧にひとつひとつの仕事をやっていきたい」と背筋を伸ばします。
自分が客として好きだった居酒屋。そこを任され、今は3代目店長として自分の哲学を信じ、発展させていく。
「自分が行きたいと思う店を、一生懸命作っていくだけです」と真剣な表情で語る宮田さん。そのひたむきな思いに、九州男児の魅力を見た気がしました。

<取材協力>

釜座二条 丸福
住所:京都府京都市中京区正行寺町669
営業時間:17:30~23:15(L.O.22:45)
定休日:無
URL: https://kbdd104.gorp.jp

▽今回「うなきゅう巻き」や「焼き枝豆」、「うずらの卵の薫製」と一緒にご紹介したお酒はこちら

・本格焼酎「よかいち」<芋>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/yokaichi/kuroimo/
▽そのほか、『ハンケイ500m(https://www.hankei500.com)』コラボ記事はこちらから

・京都・南太秦の食を満たす、もの静かな店主の賑やかな酒場の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/SPpCe

・上賀茂の新鮮野菜で味わう本格タイ料理の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/xDxYY

・「酒とは料理の楽しさを倍増してくれるもの」…京都・西院の和中創作居酒屋店主の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat4/kiydg

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