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【日本酒を知る】温度帯によって独特の呼び名がある噺

【日本酒を知る】温度帯によって独特の呼び名がある噺

気温が下がり、温かい日本酒がおいしい季節となりました。日本酒と言えば「温めても冷やしてもおいしく飲める」イメージですが、それゆえにどんな温度帯で飲めば良いのかわからないという人も多いのではないでしょうか? そこで今回は、おいしくお召しあがりいただける日本酒の温度についてご紹介します。

銘柄や種類も多く、飲み方などさまざまな楽しみ方がある日本酒。ただし、その奥深さゆえに、日本酒にそれほど馴染みのない方の中には日本酒を飲む適温って何度ぐらい?という人もいらっしゃるのでは?
酒噺では、そんな方に向けて日本酒を知り、親しんでいただくための簡単な知識をご紹介していきます。
第一回目は、日本酒の温度について。
冷蔵庫で冷やす、お湯で燗(かん)をつけるなどいろいろな温度で楽しめる日本酒ですが、その独特な呼び名をご紹介します。

世界的にも珍しい?温度で異なる言葉の表現

ビールやチューハイ、ハイボールなどで代表されるように、世界的に見てお酒は常温で飲む場合もありますが、冷やして飲むのが一般的。
紹興酒やウイスキー、ワインなど、温めて飲むお酒も一部ありますが、それらは温める温度によって、呼び名や表現が変わることはほとんどないようです。
その一方で、日本酒には温度帯ごとにさまざまな呼び名が存在します。
とはいえ、私たちも飲食店などで日本酒を注文するときは「熱燗」や「冷や」といった簡単な頼み方をしていますが、実際には温度帯によって味わいや香りが異なり、更に幅広く分類されています。

温度帯ごとの言葉の表現って?

燗酒は奈良時代ごろから日本で愛飲されており、古くは歌人・山上憶良(やまのうえのおくら)が「貧窮問答歌 (ひんきゅうもんどうか)」の中で、酒粕を温めて飲む様子が描写されています。
また、平安時代の貴族たちは9月9日の重陽の節句から翌年の3月3日の桃の節句まで、酒を温めて飲んでいたといわれています。
江戸時代ごろには、冷えた酒は体に良くないという考えから、燗(温めて)で楽しむのが一般的に。「お燗番」と呼ばれる専門職ができるほどに主流の飲み方となりました。

一方、冷酒の歴史は実のところそれほど古いものではありません。
なにせ冷蔵庫の無かった時代が長かったので、燗酒でない場合のお酒の温度は常温(室温)。現在も日本酒の「冷や」を頼むと常温のお酒が出てくるのはこうした時代の名残です。
因みに冷酒とは、冷蔵庫などで冷やしたお酒で、冷やは、常温のお酒のことをさします。

そして現在、冷蔵庫の普及や冷やして飲むのに適したお酒の登場などにより、日本酒の楽しみ方も多様化。飲み頃とされる温度も、5度から55度までの5度刻みで呼び名が付けられるようになりました。
その名称は以下の通り。

燗の表現と温度

冷やの表現と温度

常温(室温)から温度を高めていくに従って、湯煎などで温める燗酒となり日向燗、人肌燗、ぬる燗、上燗、熱燗、飛び切り燗と名称が変わっていきます。
比較的人肌燗、ぬる燗、熱燗あたりの飲み方は馴染み深いのではないでしょうか。
一方、常温から温度を下げていくと、涼冷え、花冷え、雪冷えとなります。
この辺りのネーミングセンスはなんとも日本的。冷えた日本酒を手にした時に、器から感じる冷たさから季節の情景を美しく切り取っています。

このように日本酒は、温度帯によりさまざまな呼び名があります。一度ご自宅で温度計を用いるなどして、それぞれ温度帯ごとの味わいの違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。

温度ごとに異なる日本酒の味わい

それぞれの温度帯で呼び名を持つ日本酒ですが、ではその味わいにはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの温度帯で飲むのに適したお酒と併せてご紹介します。

冷酒(涼冷え、花冷え、雪冷え)

日本酒を冷やして飲むとクリアでシャープな口当たりに。
また、香りがやや控えめで、繊細に感じられるのが特徴です。この傾向は温度が低いほど強くなります。
冷やして楽しみたいお酒の種類としては、香りを楽しむ吟醸酒や、生酒・生貯蔵酒のような爽やかな味わいを持つ日本酒がオススメです。
今回は、松竹梅「生」(生酒)をチョイス。しぼりたての味わいをそのまま瓶詰めし、フレッシュで芳醇な香りとキレのある辛口と旨味の調和を楽しむことができます。

冷や(常温)

常温のお酒は香りがはっきりしやすく、日本酒本来の味わいをダイレクトに感じられるのが魅力。また、温菜であれ冷菜であれ、どのような食事とも合わせやすいのが常温のお酒の強みです。
常温に向いているお酒は、大吟醸酒、吟醸酒など、香りが楽しめるものや、純米酒などの日本酒の風味や米の旨みを味わえるタイプがオススメです。
今回は、特撰松竹梅<大吟醸>磨き三割九分をチョイス。一緒にいただくのは板わさです。
日本酒の香りとわさびの香りのマリアージュがたまらない、絶妙な組み合わせです。

燗酒

お酒を温めると米の存在感が強まり、旨味と香りを十分に感じられるようになります。
ただし、温度が上がるにつれて香りはシャープに、コクや雑味は強くなる傾向がありますので、香り高いお酒はやや不向き。
吟醸酒や生酒などは、温めたとしてもぬる燗程度までの飲み方が適しており、上燗や熱燗、飛び切り燗などは、純米酒や生酛、山廃造りのお酒といったコクのあるどっしりとしたタイプの日本酒と好相性です。
今回は、上撰松竹梅をチョイスしました。
お米らしさが際立つ燗酒と合わせるなら、同じくお米と相性のいい漬物がオススメ。
漬物の酸味と爽やかさが燗酒を一層美味しく感じさせてくれます。

最後に、温度帯ごとの楽しみ方とはちょっと違う、酒噺おすすめの日本酒の飲み方「みぞれ酒」をご紹介。
日本酒は多くの場合、−7度〜−10度で凍りますが、―5度程度の温度でゆっくりと冷やすことで凍りと水分の混ざったみぞれ状になります。
その状態でいただくお酒のことを「みぞれ酒」と言います。

作り方としては、冷蔵庫で冷やした日本酒とおちょこやグラスなどの酒器を冷凍庫に入れ、90分ほど経ったら、やや高い位置からグラスやおちょこにお酒を注げば出来上がり。
―5度の日本酒は過冷却という状態にあり、ここに衝撃が加わることで一気に凍り始めます。その味わいは鮮烈で、日本酒の香りと甘みが、冷たい刺激を伴って喉へと流れていく感覚は他では味わえません。
みぞれ酒は作るのに少し手間とコツがいるのが難点ですが、現在はスパークリング清酒「澪」<FROZEN>など市販されているものもあるので、ぜひお試しください。

あなたのお好みの温度は?

今回は日本酒について温度帯ごとで変わる呼び名とその味わいについて解説しましたが、本来お酒をどの温度で飲むかは、一人ひとりの好みや季節、シチュエーションなどによって異なります。
夏の暑い時期はやはり冷えたお酒が美味しいと感じますし、冬の木枯らしが吹く寒い夜にはまず熱燗で体を温めてから徐々にぬる燗にシフトしていくという飲み方も乙なもの。
また、吟醸酒や大吟醸は常温や冷やして飲むと美味しいお酒ですが、これも人肌やぬる燗にすることで、また違う香りと味の表情を見せてくれます。
大切なのは自分が一番美味しいと思えるお酒と温度のバランスを見つけること。
皆さんだけの組み合わせをぜひ見つけてくださいね。

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