造り方から文化まで、「日本酒」のすべてを知る噺〈前編〉
2025,12,5 更新
日本を代表するお酒といえば、やはり日本酒。2024年には、焼酎や本みりんなどを含む「伝統的酒造り」が、ユネスコ無形文化遺産へ登録されました。「酒噺」でもこれまで、さまざまな角度から日本酒を深掘りしてきました。今回は、過去の記事を紹介しながら、2回に分けて日本酒の魅力をお届けします。〈前編〉では、日本酒の造り方から味わい、飲み方について解説していきます。
日本酒の原料
日本酒を選ぶ上で知っておくと便利なのが、原料や製法などによって分類される「特定名称酒」です。「特定名称酒」の分類における大きなポイントは次の二つです。
・純米酒かどうか(醸造アルコールを添加しているか)
・精米歩合(原料の米を削った割合)
醸造アルコールを使わず、米・米麹・水だけで造った特定名称酒であれば「純米酒」に分類されます。それ以外は、香りや口当たりなど、狙うべき酒質に応じて醸造アルコールを加えた「吟醸酒」「本醸造酒」になります。
精米歩合は、精米後に残った米の割合をパーセンテージで表し、50%以下なら「大吟醸」、60%以下なら「吟醸」。さらに60%以下で特別な製造方法で醸したものには「特別」と冠するものもあります。
これらを踏まえ「大吟醸酒」「純米大吟醸酒」など8種類に分類され、特定名称酒の条件を満たさないものは「普通酒」に分類されます。酒税法上の分類ですが、全体として日本酒は9種類に大別されます。
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酒造りに適した米と水
酒造好適米とは読んで字のごとく、食用米よりも酒造りに向いている米のこと。主に心白(しんぱく)という米の中心部の白濁した部分が発現しやすく、大きいという特徴があります。心白があると水を吸いやすく、酵母菌が入りやすいため、酒造りがしやすいのです。
さらに原料米の品種や酵母の種類、仕込水の硬度などによって多様に味わいが変わることも、日本酒の醍醐味といえるでしょう。日本酒のなかでも二大銘醸地、酒都と呼ばれる京都の「伏見」と兵庫の「灘」は、名水の郷としても有名です。
知っておくと便利な日本酒の味と香りについて
日本酒の味と香り(香味)は、「香り高い」「軽快でなめらか」「コク深い」「熟成」の大きく4タイプに分けられます。例えば「香り高い」タイプは、華やかで透明感のある果実や花の香り、「熟成」タイプはスパイスや干した果物などの力強く複雑な香りが感じられます。
ただし、比重はアルコールの度数によっても変化し、酸味の強弱によっても甘さの感じ方は左右されます。そのため、日本酒の「辛口」「甘口」は、あくまでひとつの目安としてとらえるといいでしょう。
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バリエーション豊富な日本酒の飲み方
最近ではチューハイやレモンサワーなど、炭酸で割るお酒も定番化しており、この文化に合わせて、松竹梅「瑞音(みずおと)」という“炭酸割りで楽しむ”をコンセプトにした日本酒も登場しています。炭酸水で割ることで、よりすっきりとした味わいになり、低アルコールで飲みやすい「日本酒ハイボール」は、日本酒の入門編としても適しており、現代的な楽しみ方ともいえるでしょう。
知っているようで知らない「日本酒」の造り方や味わい、飲み方などについて紹介してきました。日本酒について理解を深めることで、いつもの一杯がさらに豊かなものになるはずです。古くから伝わる製法や、新しい飲み方にも挑戦して、あなただけの日本酒の魅力を見つけてください。
引き続き〈後編〉では、信仰・歴史・伝統行事が紡ぐ「日本酒」と「日本文化」について解説します、お楽しみに。
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